天津甘栗の歴史
中国河北省から日本へと受け継がれた伝統の味
天津甘栗の起源
中国河北省燕山山脈の恵み
天津甘栗の本当の産地
多くの方が「天津甘栗」という名前から天津市が産地だと思われがちですが、 実際の産地は中国河北省の燕山山脈周辺地域です。 天津市では栗の栽培はほとんど行われておらず、船積みされた栗が天津港から出航することから 「天津甘栗」の名がつけられたのが由来となっています。
河北省5県の特別な栗産地
- ・青龍県 - 山並みに囲まれた海抜の高い地域
- ・寛城県 - 万里の長城沿いの理想的な環境
- ・遷西県 - 昼夜の寒暖差が大きい栽培適地
- ・遵化市 - 伝統的な栗栽培の中心地
- ・興隆県 - 燕山山脈の豊かな自然環境

万里の長城沿い
理想的な栽培環境
中国における甘栗の歴史
700年以上の伝統
天津甘栗の原型である焼き栗は、中国大陸では西暦13世紀ごろ麦芽糖に栗を混ぜて 砂と一緒に釜で焼く「糖炒栗子」が存在し、 麦芽糖によって栗の皮を甘くし、見映えをよくするという工夫がなされていました。
宋代の流行
宋代に流行し、都の開封には名物として知られた焼栗屋があったという記録も残っており、 700年以上の長い歴史を持つ伝統食品です。 現在でも中国では「糖炒栗子」として、秋から冬にかけての季節商品として親しまれています。
日本への伝来と横浜中華街での発展
横浜開港
日本の国際貿易が始まり、中国との交流が本格化。 天津甘栗を含む中国文化が日本に流入し始める。
横浜新田居留地の誕生
横浜中華街の前身となる外国人居留地が設立。 中国人商人たちが集まり、本格的な中華街の基礎が形成される。
聘珍楼創業
日本最古の中国料理店「聘珍楼」が開業。 後に「聘珍大甘栗」ブランドを確立し、高品質な天津甘栗の提供を開始。
関東大震災と中華街の変化
震災により多くの欧米人が帰国。中国人中心の街へと変化し、 中華文化がより深く根付く。天津甘栗も街の名物として定着。
観光地化政策
横浜市長らの提唱により、中華街を観光地として再建。 天津甘栗の屋台も増加し、街の風物詩として確立。
伝統の継承
150年以上の歴史を持つ横浜中華街で、天津甘栗は今も愛され続ける。 伝統製法を守りながら、新しい時代に合わせた展開も。
甘栗文化の定着
横浜中華街の発展と共に、天津甘栗も日本の食文化に浸透していきました。 横浜中華街を歩いていて「栗を売っている屋台」がとても多い現象は、 天津甘栗が中華街の名物として確立された証拠といえるでしょう。
「街を歩けば香ばしい甘栗の香りが漂い、焼きたての甘栗を求める人々で賑わう光景は、 横浜中華街の風物詩となっています。」
聘珍楼と天津甘栗の深い関係
日本最古の中国料理店
1884年(明治17年)創業の老舗中国料理店「聘珍楼」は、 張姓の華僑が横浜中華街で開業。日本における本格中国料理文化の発展と共に歩んできました。
聘珍大甘栗ブランド
聘珍楼は「聘珍大甘栗」というブランドで高品質な天津甘栗を提供。 本場中国河北省の完熟栗、大粒のみを厳選しています。
縁起物としての文化
「勝栗(かちぐり)」と言われ、勝負・仕事・病気に勝つなどの縁起物として、 特に受験生へのギフトに最適とされています。
品質へのこだわり
青龍産の最高級栗
聘珍樓の天津甘栗は中でも一番とされる「青龍(せいりゅう)」地域より取り寄せた大粒の栗を使用。 青龍県は山並みに囲まれた海抜の高い地域で、板栗栽培の北限に位置します。
伝統製法の継承
直営工場で栗の自然の甘みを生かした焼き加減を心得た職人が、 温度差をつけながらじっくりと時間をかけて焼き上げる製法で、伝統的な味を守り続けています。
現代における天津甘栗の価値
🔥伝統製法の継承
現在でも遠赤外線効果で均一に火を通すのに必要な「大磯産の砂利」を使用した伝統的な製法で、 じっくりかき混ぜ、一粒一粒が「ホックリ」する状態に焼き上げています。
💚健康価値の再認識
栗は栄養素が豊富で特に葉酸は貧血予防に効果大。 現代の健康志向の高まりと共に、天津甘栗の栄養価値も見直されています。
✅品質管理と安全性
厳格な品質管理の下、温度・湿度等の厳重管理により保管。 比重選別と目視による徹底した選別により、安全で高品質な商品を提供しています。
受け継がれる伝統の味
天津甘栗は、中国河北省燕山山脈の豊かな自然環境で育まれ、 700年以上の歴史を持つ伝統食品です。
横浜開港と共に日本に伝わり、横浜中華街の発展と共に日本の食文化に根付きました。 聘珍楼をはじめとする老舗店によって品質と伝統が守られ、 現代でも多くの人々に愛され続けています。
香ばしい香りと自然な甘さ、ホクホクとした食感は、 時代を超えて人々の心を魅了し続ける、まさに「伝統の味」といえるでしょう。
天津甘栗を味わうことは、中国の大地の恵みと日中の食文化交流の歴史を感じることでもあります。 一粒一粒に込められた職人の技と伝統の重みを、ぜひご堪能ください。